クラレンス・レジナルド・ダルビー[1](Clarence Reginald Dalby、1904年-1983年)は、汽車のえほんの3代目画家。
概要[]
クラレンス・レジナルド・ダルビーは、1904年にイギリスのレスターで生まれました。1917年にレスター・カレッジ・オブ・アートの奨学金を獲得し、美術を学びました。卒業後は、商業デザイナーとして5年間働き、最初に担当したのはビール瓶のラベルデザインだったそうです。ダルビーは、レスターにあるフォックス製菓の配達車に、フォックス氷河ミントのマスコット・ペピイを最初に描いた人物でもあります。
第二次世界大戦の勃発によりダルビーは英国空軍に入隊し、MI9にて兵士が敵地を脱出するための「Escape and Evasion」の作戦を考案しました。戦争末期に、インドのルイス・マウントバッテンとの諜報機関の仕事を提供されますが、アーティストとして仕事を再開しようと考えていたので辞退しました。しかし、商業デザイナーとしての働き口はなく、シェフィールドの輸血施設で仕事をしたこともあったようですが、半年ほどしてフリーランスの仕事を探してレスターに戻りました。
予定していたレジナルド・ペインが降板し、『汽車のえほん』の3人目の挿絵画家を探していたエドモンド・ウォード社は、レスターのロイヤル・ホテルでダルビーと会いました。そして、オードリー牧師のラフスケッチを渡して、『赤い機関車ジェームス』の挿絵を依頼しました。ダルビーの色鮮やかで生き生きとした画風は、読者から親しまれ、シリーズの世界観を確立しました。そして、翌年には既刊の2巻の描き直しと新作の挿絵を任されたのです。
しかし、ダルビーとオードリー牧師は反りが合わず、共同作業は困難なものでした。ダルビーはオードリー牧師のことを「
ダルビーの挿絵は機関車や客車などの細部描写が適当であったため、オードリー牧師の所には読者から指摘の手紙が殺到しました。オードリー牧師は画家のせいにはせず、解説を返事に書くこともありました[2]。そして1956年、ついに事件が起こります。実際にはあり得ない形状[3]をしたパーシーの挿絵を見たオードリー牧師が「これじゃ赤線の入ったイモムシだ」と苦言を呈したのです。これに立腹したダルビーは『ちびっこ機関車パーシー』を最後に、『汽車のえほん』の挿絵画家を降板してしまいました。
『汽車のえほん』の挿絵は、約6週間しか掛からなかったため、並行して商業デザイナーの仕事をしていました。1955年には、ドーセットのプール港で働いていたフェリーに触発されて執筆し挿絵も手掛けた、タグボートのタビーが主人公の『
ダルビーは、6週間の旅行で訪れたスペインのコスタ・ブランカを気に入り、3年間滞在しました。その後、ギリシャも気に入り、フランスを加えた3ヶ国で絵を描くことに熱中しました。
1983年、短い闘病の末、79歳で亡くなりました。
挿絵[]
- 3だいの機関車(1950年/ウィリアム・ミドルトンの絵を描き直し)
- 機関車トーマス(1949年/レジナルド・ペインの絵を修正)
- 赤い機関車ジェームス(1948年)
- がんばれ機関車トーマス(1949年)
- やっかいな機関車(1950年)
- みどりの機関車ヘンリー(1951年)
- 機関車トビーのかつやく(1952年)
- 大きな機関車ゴードン(1953年)
- 青い機関車エドワード(1954年)
- 4だいの小さな機関車(1955年)
- ちびっこ機関車パーシー(1956年)
メモ[]
- 原書で「C. Reginald Dalby」となっているのは、ダルビーが「
Clarence 」という名前を嫌っていたためです。 - 汽車のえほんの旧版ではレジナルド・ドールビー表記でしたが、2001年出版のトーマス大図鑑からレジナルド・ダルビー表記に変わりました。また、公式サイトや原画展図録では原書に準じてC・レジナルド・ダルビー表記です。
- ダルビーの名前は、いくつかの挿絵に登場しています。
- ダルビーの挿絵には、汽車のえほんの広告や原作者一家、編集長の名前などが描かれていました。
- 第4巻第1話の3枚目の挿絵には、
“Now in Stock: James the Red Engine” の張り紙と“Grand News: All About Thomas the Famous Tank Engine” の看板があります。 - 第5巻第4話の3枚目の挿絵には、原作者のオードリー牧師と妻のマーガレット、子供達のクリストファー、ヴェロニカ、ヒラリーがパーシーの入れ替え作業を見学しています。
- 第6巻第1話の5枚目の挿絵には、
“A must read: The Three Railway Engines” と“Read About: James the Red Engine” の張り紙があります。 - 第6巻第4話の3枚目の挿絵には、“Troublesome Engines”と書かれた青い2階建てバスが走っています。
- 第11巻第2話の2枚目の挿絵には、“E.T.L.Marriott”と書かれた看板の建物があります。
- 第4巻第1話の3枚目の挿絵には、
- 後任画家のジョン・ケニーが描いた第13巻第1話の最初の挿絵には、牧師と蝶ネクタイをした男性がダックを見学しています。編集者のエリック・マリオットによると、オードリー牧師がダルビーにダックの正しい描き方[4]を説明している様子だそうです。
- 第26巻第2話[5]のトーマスのパーシーに対する悪口は、ダルビーに対するオードリー牧師の「これじゃ赤線の入ったイモムシだ」という苦言に基づいています。
画像[]
脚注[]
外部リンク[]
- C Reginald Dalby(SiF)
Tales of Flitterwick Harbour (SiF)